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「規律」と「連帯」 危機管理を支えるもの

2011年3月11日午後2時46分。当時私は日本に住んで17年目でしたが、これほど激しい地震を体験したのは初めてでした。東北の海岸沿いの町や村ではサイレンが鳴り響き、そのわずか20分後に、高さ40メートルの津波が襲来します。津波は港や浜を飲み込み、車、家、船は何キロも内陸へと押しやられました。そして18000人以上が犠牲となりました。

この自然の脅威を目の当たりにした人は、決して忘れることはできないでしょう。一方で、同じくらい深く私の記憶に刻み込まれたのは、震災後の日本人の規律正しさと団結力です。津波被害があった地域では、多くの住民が学校で習った通りに高台に上り、避難所となった公共施設や体育館に集まりました。東京では、電車はすべて止まり、交 通は滞り、停電が起こりました。その後も強い余震が続き、家族や友人の安否が心配される中、人々は慌てず、冷静に行動しました。何時間も歩く帰宅者の列ができ、自転車を購入する人も多くいました!お店やレストランは、道行く人々にトイレを開放し、飲み物を提供しました。

今日、「東日本大震災で日本はどう変わったか」と聞かれたら、私はこう答えます。日本人はこの10年で、未曽有の危機は克服し、管理し得るということを、自らに、そして世界に証明したのです。私はその時の経験から、極限の困難をも受け止め、正しい答えを見つけ出す日本の力に、より強い信頼感を抱くようになりました。その一例として、当時日本政府が電力使用量を15%削減するよう呼びかけたのに対し、企業や一般世帯は、短期間で30%もの削減を達成したことが思い出されます。

確かにドイツからは、特に最初の数日間は危機管理がうまくできたようには見えなかったでしょう。福島原発事故の詳細が伝えられず、苛立ちが募ったことも事実です。しかし振り返ってみると、実際に原子炉で何が起こっているのか誰も分からなかったあの状況で、菅(直人)政権はよくやったと言えるのではないでしょうか。首都圏からの住民の大量脱出を避けるため、海外メディアで見られたような憶測による報道も控えられました。

そんな中、仲間や部下のいる東京に残り、状況を見極めながら、ともに被害の対応に尽くすと決めたドイツ人たちにとって、何よりも難しかったのは、その決断をドイツに居る家族に説明することでした。ドイツの家族は、絶え間なく発信される福島関連の悪いニュースに気が気でなかったからです。

福島原発の原子炉は、電源喪失により完全に外部から切り離されましたが、決してこのまま放置されることはありませんでした。最初は少数の職員がとにかく必死で作業にあたっていましたが、しかし間もなく、生命の危険も顧みず、東京や大阪から何百人という有志の消防隊員が加わり、そして事業者である東京電力や他の電力会社の職 員も援護し、被害を最小限に抑えるために決死の努力を続けました。10日後、発電所は電源への再接続に成功します。これで事態が収束したわけでは全くありませんが、その後の作業は、一歩一歩進めていくプロジェクトのような性格を持っていました。

この時、多くの海外メディアが福島の事故を取り上げ、実際の現地の状況とは異なるセンセーショナルな報道をしたことで、明らかな誤解や誤判断が生まれました。例えば、ドイツ最大手クラスの某不動産ファンド会社は、福島の状況により東京のファンド物件(当時のファンド運用資産総額の14%に相当)を評価することができなくなったとして、グローバル不動産ファンドの償還と新規販売を一時停止しました。しかし実際には、このチャートが示すように、東京の物件は震災直後の数ヶ月間で価値が下がることはありませんでした。

* 100 = 2011年3月1日の指数 出典:建造キャピタル株式会社、経済産業省 (2011年10月12日); 一般社団法人不動産証券化協会(ARES)データブック

そして2020年、「中国で新型ウイルスが流行している」というニュースが流れ始めたとき、日本の人々は即座に団結し、生活様式を切り替えました。日本では以前から、晩冬のインフルエンザや春のスギ花粉による花粉症対策として、マスクは一般的なものではありましたが、この時から一貫してマスクを着用するようになりました。また、店舗や企業は、オフィスや入り口に消毒液を設置しました。その結果、日本の第一波の感染者数の増加は、ドイツに比べて比較的緩やかであっただけでなく、インフルエンザの感染者数も例年に比べて7割以上も減少しました。

また、日本ではロックダウンを命令する必要はなく、企業に在宅勤務を奨励するよう要請し、レストランやバーに時短営業をお願いするだけで、2020年春と現在の第三波の新規感染者数は十分に抑えられています。ドイツをはじめとする諸外国で、マスクの義務化に端を発する「自由剥奪」への反対運動が起こっていると報じられても、日本ではその感覚が理解できません。周りの人々を守る事、すなわち公共の福祉については、誰もが当然の義務だと思っているからです。

トヨタなどの企業が、コロナ禍で生産を縮小せざるを得なくなった企業から従業員を何千人も受け入れたという話も、この感覚を表す良い例でしょう。トヨタの場合は、航空機生産が激減した三菱重工の社員を多く受け入れました。このような例は枚挙にいとまがありません。日本は何千年も前から、地震、津波、台風といった自然の脅威と共に生き、危機管理を実践し、見直してきた国です。この国は、2011年の大震災後と同様に、今日のコロナ禍においても、「規律」と「連帯」という揺るぎない国民性で、必ず危機を乗り越えるでしょう。

「規律」と「連帯」 危機管理を支えるもの – Summary

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